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不器用なふたり 新たなる挑戦2

Author: 相沢蒼依
last update Petsa ng paglalathala: 2026-01-09 07:23:39

***

 せっかくの出逢いを無にしないため、俺は橋本の黒塗りのハイヤーを探し出し、エナジードリンクをいただいたお礼を告げつつ、友達になってくれと頼み込んでみた。探し出す際に見た橋本のドライビングテクニックに惚れこんだのが理由のひとつだった。

 最初は難色を示していた橋本だったが、俺の過去の恋愛話を偶然耳にしたのがきっかけで、あっさり友達になってもらえた。

 顔を突き合わせながら言葉を交わしていくうちに、乗ってみたいと憧れていた車を橋本が所有していることがわかり、恋心がさらに加速した。それと同時に、橋本に片想いしている相手がいることを知った。その人は、ハイヤーを日頃から使っている同性の既婚者だった。

 見た目が残念すぎる自分を好きになってもらえるチャンスがあるかもしれないと淡い期待を抱き、橋本の愛車を借りて、峠のコーナーを攻めてみた。橋本にいいところを見せるべく、ここぞとばかりに頑張ってしまった結果、助手席で失神させてしまったという悲しい出来事になったが、橋本の心を動かすことに成功し、付き合うことになった。

 レールのないジェットコースターのような走りをする俺の隣に乗っているうちに慣れ
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    *** 次の日、橋本は隙間時間を作り、野木沢の店に向かった。「あれで一応手加減したって言うんだから、本気で抱かれた日にゃ、俺の躰は壊れちまうかもしれない……」 昨夜の行為のせいで、げんなりしながら痛む腰を擦りつつ、店の扉を開けようとしたら、微笑ましい様子の異性のカップルが出ようとしたのか、タイミング悪く橋本と鉢合わせになった。「すみません」 慌てて一歩退き、出やすいように対処した橋本に、カップルは一礼して店をあとにした。幸せそうな雰囲気を醸しているカップルを、何とはなしに目で追っていると。「橋本……」 客を見送ろうとしたらしい野木沢が、弱々しく声をかけた。「よっ! 昨日は途中退席して悪かったな」「もしかして……。ペアリング作るの断りにきたのか?」 明るく話しかけた橋本とは相反して、野木沢はらしくないくらいに沈んだ表情だった。「おまえのデザイン気に入ってるのに、断るわけないだろ」 ジャケットからネクタイピンを出して、わざわざ見えるようにしたのに、顔を逸らしてあらぬ方を眺めた。「……宮本様から、何も聞いてないのか?」「聞いたさ。野木沢がイケメンで羨ましいだって」「そうじゃなく――」「陽さんって昔から面食いなんですねって、呆れながら言われた」 ネクタイピンをもとに戻し、身なりを整えた橋本のセリフを聞いて、大きなため息をつく。「宮本様は僕のこと、悪く言わなかったのか?」「悪く言うもなにも、自己嫌悪に陥ってた。陽さんの隣に俺みたいなのがいていいのか、みたいな」「…………」「バカだよな~。人は見た目じゃねぇのにさ」「あのさ橋本、あの頃に戻れないかな?」 自分の本心を伝えるために、芝居がかった口調で語気を強めた橋本を野木沢は直視し、想いをぶつけた。「あの頃?」「僕が困ったときに手を差し伸べてくれた、学生時代のように。橋本の傍にいたいんだ」「別に構わないけど」「ホント!?」 断られると思っていただけに、スムーズに願いが叶ったお蔭で、野木沢の沈んでいた気持ちがみるみるうちに浮上する。「ああ、本当。ほら、これが俺の連絡先」

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    橋本のセリフに耳を傾けながら、店でのやり取りを思い出す。言葉巧みに責められっぱなしな上に、自分との見た目の比較など、落ち込む要因しかなかった。それだけに、宮本は目から鱗が落ちた。「なるほど……」「今度店に顔を出したとき、胸を張って言ってやれ。『陽さんを抱いてます』ってな。腰抜かすかもしれねぇぞ!」「ついでに、陽さんの腰を抜かしてあげたいんですけど」 とても小さな声でのおねだりだったが密閉空間ゆえに、橋本の耳にしっかりと聞こえてしまった。「何を言ってやがる……」「見てわかるでしょ。俺の――」 言いながら自身の下半身に指を差す宮本の姿に、橋本はギョッとして顎を引いた。「今夜は陽さんがやめろって言っても、めちゃくちゃにしちゃうかもしれません」「俺、明日も仕事なんだぞ。ちょっとくらいは手加減してくれ」 濡れた髪をかき上げて立ち上がり、そっぽを向く。頬だけじゃなく耳まで赤くなっている様子に、宮本の笑みが隠しきれなくなった。声を立てて笑うと、浴室に反響しまくる。「雅輝……」「やっぱり陽さんには敵わないな。沈んでいた俺の心を、一瞬で持ち上げるんだから」 宮本は勢い良く立ち上がって、橋本に抱きついた。強く抱きしめたはずじゃなかったのに、喘ぎ声に似た声が口から漏れ聞こえる。「まずは陽さんが感じやすい、バックからしたいんだけど」 耳元で甘やかに囁かれた言葉に、橋本は黙ったまま頷いた。 峠のコーナーを容赦なく攻めるような無茶ぶりはしなかったものの、熱の入った宮本の行為に、橋本はなすすべがなかったのだった。

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     浴室に宮本の断言する声が響いた。「雅輝、ホントおまえってばバカだな」「バカなのはわかってる。陽さんが江藤ちんと逢ったときの気持ちが、野木沢さんに逢ってやっとわかったくらいだし」 宮本はしゅんとして、なぜかその場に正座をした。「ごめんね、陽さん」「なにがだよ?」 正座をした宮本の前にしゃがみ込み、顔を覗き込む。橋本の視線を受けて、目の前にある顔が慌てふためいた。「陽さんってば、そんな色っぽい顔を近づけないでくださいよ。理性をきちんと押し留める、俺の気持ちも考えてください」「もっと雅輝の気持ちを教えてくれ。野木沢に俺と関係があったって聞いたとき、どんな気持ちになったんだ?」 顔を近づけるなと注意されたばかりだというのに、橋本はわざと顔を近づけた。宮本は大好きな恋人の顔をまじまじと見つめながら、ごくりと喉を鳴らす。「雅輝、ほら吐いちまえって」「あ、えっと……、野木沢さんは陽さんの好みなんだなって。俺と違ってイケメンだし、漂ってる雰囲気が上品な感じで、俺と違いすぎると思ったら、自然と落ち込んじゃった。陽さんの相手が不細工な俺でいいのかと」「俺も思った。江藤ちんみたいなイケメンじゃねぇし」「そんなことないっ! 陽さんは俺にはもったいないくらいの、すっごくいい男です」「ハハッ、ありがとな。そんでもってその言葉、そのまま返してやるよ」 言いながら宮本の頬を、橋本は両手で包み込んだ。「おまえの持つ純真無垢な心は、見た目のいい野木沢が持ってない、すげぇものなんだぞ。雅輝は俺にとって、もったいないくらいのいい男さ」「陽さん……」 太い眉をへの字にして、あからさまにしょんぼりしている宮本に、橋本は触れるだけのキスをした。「おまえ野木沢に、俺を抱いてること言ってないだろ?」「そんなこと言う雰囲気じゃなかったです」「それなら好都合だ」「好都合?」 宮本は橋本に顔を掴まれたまま、わけがわからず首を傾げる。そんな不思議顔をしている恋人を、優しいまなざしで見つめた。「アイツは、おまえが俺に抱かれてると思ってる。つまり同じネコだと思って、今回ケンカをふっかけてきたということさ」

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    *** 仕事で汗をかいたから、先にシャワーを浴びたいと言ったというのに、待ちきれなかったのか、浴室に乱入してきた宮本。 躰を洗っている最中の橋本はギョッとして、扉を開けた宮本をガン見するのがやっとだった。欲情に満ちたまなざしを注がれるだけで、同じ気分に陥る。「雅輝……うっ」 橋本のつぶやきを封じる口づけは、一気にボルテージをあげる。 修行僧のようにシャワーを受け続ける宮本をなんとかせねばと、必死にコックを捻って止めたが、髪から滴る水もお構いなしに、首筋へと顔を移動させる。「んっ!」 ぐらついて背中を預けた先は鏡だったらしく、背中にひんやりした冷たさを感じた。「陽さん…陽さんっ」「ああっ、あっぁッ」 舌先を使って、執拗に胸の頂を責められる。以前はそんなに感じなかった行為だったが、最近はぞくぞくするような、なんとも言えない快感を覚え、あられもない声が出てしまった。「陽さんは俺の――」 胸を吸いながら宮本の空いた手が、後ろの秘部へと伸ばされる。なぞるように割れ目を伝い、そして――。「んうっ!」 滴る水滴に導かれて、指が1本挿れられたのがわかった。 解しやすいように尻を突き出すと、宮本はしゃがみこんで橋本自身の先端を優しく咥え込む。「うっ、あっあっ…もっと」 もっと深く咥えてほしいのに、宮本はそれをせずに先端を弄ぶ。その間も後孔の入口は順調に解されていき、指の数が増やされていた。「雅輝、意地悪するなよ」「んっんっんっ、陽さんの美味しい」「もっと咥えろって、それじゃ物足りない」「だったら、俺の中に挿れる?」 意外な言葉に、橋本の快感がどこかに飛んでしまった。「な、なにを言って……。どうして」「俺のこと、抱きたいって思わないの?」 何度も瞬きする橋本を、宮本は下から仰ぎ見た。視線を逸らさずに、まっすぐ見つめられるせいで、橋本の緊張感が自然と増していく。「雅輝を抱くなんて、考えたこと――」「付き合う前に、俺を襲ったでしょ。今は抱きたいと思えないんだ」「おまえ、野木沢に嫉妬してるだろ」「してる、すっごくしてる。今すぐ陽さんに抱かれたいくらいに!」

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    *** スラックスのポケットに手を突っ込んでマンションの鍵を探りつつ、仕事で疲れた躰を引きずりながら通りを歩いていると、その存在にすぐに気づくことができた。合鍵を渡しているのに、なぜだかマンション前で星を見上げている恋人を目の当たりにして、橋本は慌てて駆け寄る。「雅輝、どうした? 鍵を失くしたのか?」 橋本のかけた声に反応して振り向き、靴音を立てて駆け寄るなり、掻っ攫うように抱きつかれた。「おいおい。鍵を失くしたくらいで、俺は怒らないって。また作ればいいだろ」 骨が軋むくらいの強い抱擁に呆れながら宥めてみたものの、宮本は橋本の肩に顔を埋めて、一向に喋ろうとしない。「雅輝?」 昼間逢ったときとは一転した様子に、橋本はありえそうなことを考えてみる。思い当たるフシは、一つしかなかった。「おまえ野木沢と、なにかあったのか?」 野木沢というワードが出たタイミングで、宮本の躰がビクついた。「図星か、めんどくせぇな」「ごめんなさい、俺は」 放り出すように橋本から手を放した宮本は、俯いたまま後退りして距離をとる。それを引き留めるために橋本は手を伸ばして、宮本の右手を掴み寄せた。「違うって。めんどくせぇのは雅輝じゃない。野木沢のことさ」 通りに誰もいないのをいいことに、掴んだ右手をさらに引っ張り、近寄った宮本にキスをした。触れるだけで終わらせようとしたのに、橋本の後頭部を掴んだ宮本が、これでもかと深く口づける。「んうっ……」 橋本の甘い声を聞いて、宮本から唇を外した。「陽さん、俺ね、俺は」「俺は雅輝が好きだ」 宮本の言葉を遮った橋本のセリフに、宮本の瞳がゆらりと揺らめく。不安をかき消すような内容だったからか、目の前の顔から困惑の色が消えていった。「陽さんには敵わないな……」「伊達に年食ってるわけじゃねぇってことさ。とりあえず話は、家に帰ってからするか」 橋本は宮本の利き手を掴んで歩き出そうとした。それなのに、引っ張る力を無にするように立ち竦む。「雅輝、これ以上手をかけるなって」「話し合う前にそのぅ……、むぅ」「なんだ? 早く言えって」 ぐいぐい引っ張ったら、やっと歩き出した宮本。引きずられるように歩きながら、ぽつりと呟く。「陽さんとエッチがしたい……」 蚊の鳴くような小さな声に反比例して、橋本の頬がぶわっと赤く染まったのだった

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    「は?」 呆けたようにきょとんとした宮本は、口を半開きにしたまま、野木沢をまじまじと見つめる。「ずっと忘れられなかった。逢えなかった間も、いつもアイツを思い出してた。でもさっき逢ったら、諦めていた想いが再燃して……」「再燃、え…っとそれは、鎮火する見込みは――」 間の抜けた質問を投げかけていことがわかっていたが、問わずにはいられなかった。「嘘ですよ」「へっ?」「宮本様が大切にしてる橋本を、僕がとるなんてありえませんよ。脅かしてすみません」 丁寧に頭を下げて詫びる野木沢に、「そうですか、びっくりした」なんていう言葉と、のんきすぎる対応をする。短い間のやり取りだというのに、精神の疲労が半端なくて、今すぐにでも家に帰りたくなった。「橋本とまたご来店する日を、お待ちしております」 野木沢は頭をあげるなり、営業スマイルで宮本を見据える。自信満々の笑みを目の当たりにし、目を瞬かせながら取り繕うような笑顔を見せた。「はいぃっ、陽さんとそのうち顔を出しますね。失礼します!」 ぺこりとお辞儀をしてから、そそくさと逃げる感じで店をあとにした。 胸元をぎゅっと握りしめて、デコトラを停めてある駐車場に向かう。着ているシャツが、汗でじっとり湿っていた。(あの様子は野木沢さんが、冗談を言ってるように思えなかった。どうしよう、陽さんの好みっぽい彼が迫ったら、心変わりするかもしれない。だって俺は陽さんの好みと、かけ離れているから――) 心が押し潰されそうになりながらも、午後からの仕事をなんとかこなした。早く仕事を終わらせて、橋本が住むマンションに行くことを目標にしたお蔭で、いつも以上に手際よく仕事をこなせたのだった。

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    「陽さん、俺の顔が陽さんになってない?」「寝ぼけてるのかよ、雅輝は雅輝だって」「良かった~。もとに戻ったんだ」 触れられている橋本の手をぎゅっと握りしめながら、思う存分歓喜した。 喜び勇んだ宮本に呆れながら説明を求めた橋本に、夢の中の出来事をぽつりぽつりと話して聞かせる。「俺になった気分は、そんなに最悪だったのかよ?」 喋っているうちに落ち着いた宮本を、布団に入り直した橋本が腕枕をして抱きしめた。密着する素肌から伝わってくる熱が、とても心地よく感じた。「最初は喜んだよ。『わーい、陽さんになっちゃった』っていう調子で小躍りしたあとに、隣で寝てる自分の姿を見て、思いっきりショックだ

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    (陽さんさすがだなぁ。微妙な違和感からインプの異変を感じとれるところを、ぜひとも見習わなくちゃ!)『この間の、潮吹きさせたこともそうだ。俺を感じさせたい気持ちは分からなくもないが、ほどほどにしてくれないと壊れるぞ』「はーい、ごめんなさいです」『最近の雅輝は、手加減をしなさすぎる。この躰と変わってほしいくらいだ』 そんな橋本の望みを聞いた神様か仏様が、宮本と入れ替わりさせた――。のか?「オーマイガー! 南無阿弥陀仏! ごめんなさい、本当にごめんなさいっ! これからは陽さんを大事にしながら、大切に取り扱いいたします、多分……。いや絶対に! だから、もとに戻してくださいましぃ」 持って

    last updateHuling Na-update : 2026-03-31
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    主の誕生日プレゼント*** 昨年、アンドレア様の誕生日に強請られたものは、私が愛用している懐中時計だった。その前の年は万年筆という具合で、身の回り品をアンドレア様はなぜかほしがられた。「伯爵家次期当主になる貴方様が、わざわざ使うようなものではございません」 そう言って窘めたのに、まったく聞く耳を持たず、「俺の誕生日なのに、おまえはほしいものをプレゼントする気持ちはないのか?」と言い放ち、苛立ったご様子で、私の手から身の回り品を奪取した。 毎年おこなわれるパーティー後に、強引に奪われたプレゼントを思い出しつつ、今年の誕生日パーティーを無事につとめた主の横顔を眺める。 アンドレア様は

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